減免制度について

                           (北大阪支部S高校UY)

 

 府立高校授業料減免制度のあり方について(提言)について先に述べます。

公立高校授業料は国際的に見ても、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど主要国は無償であり、わが国でも第2次世界大戦後の新学校制改革のなかで「高等学校は義務制ではないが、授業料を徴収せず、無償とすることが望ましい」(新学校制度実施準備案内、文部省昭和22217日通達)と記されています。

他方、今回の『府立高校授業料減免制度のあり方について(提言)』の中での府立高校授業料の位置付けでは、「授業料は、教育経費のすべてを税で賄うのではなく、一定部分の負担を利用者に求めるものであり、いわゆる『応益負担』の原則のもと徴収されるものである。そして、その負担は学資負担者やその家庭の『自助』努力によって賄われるべきものである」としていますが、国際的に見ても、戦後の方向性から考えても、応益負担が必ずしも原則ではありません。原則は高校授業料の無償です。ましてや『自助』努力に賄われるべきものであるとしているのは、言語道断です。このような認識では、少子化は止らないと思います。教育費が嵩むので子どもを産むことを控えている夫婦は多いと思うのです。次の表は大阪府統計年鑑をもとに作成したものですが、平成12年から家計に占める割合は4%を越えています。収入が増えていないのです。

 

表1 1世帯当たりの月別の消費支出に占める授業料の割合の変遷

 次に減免制度ですが、「現行制度の検証と評価」の中で「同一の基準ではないものの、全都道府県が減免制度を持つ中で、全国平均の約3倍で全国2番目の高い率である鳥取県(同、12.5%)と比較しても倍近い開きがあり、大阪府の減免率は突出して高いと言わざるを得ない」と記載されていますが、これは、減免制度に問題点があるのではなく、大阪全体が不景気であるということの証ではないのでしょうか。また、「このような要因として、大阪府の生活保護率や失業率、離婚率等が全国平均に比べて高い状況にあることが考えられるが、いずれの指標も、減免率が全国平均の3倍まで至っていることの理由を充分説明できるものではない」としていますが、生活保護率が3倍になれば、確かに現行制度では減免者数は3倍になります。しかし、失業率や離婚率が3倍になっても単純に3倍にはならないことは自明です。有識者会議の資料が示すように、平成10年度の大阪府の減免率は10.5%、福岡県は8.1%と若干大阪府が高い率であったものが、平成15年度に大阪府が22.4%、福岡県が11.7%となっています。福岡県の減免制度が変わっていないとするならば、この大阪府の率が福岡県の倍になったのはどうしてなのでしょうか。大阪府の減免制度に問題があったからではないでしょう。生徒の家庭経済状況が悪化したことに他ならないと思います。京都も平成15年度では京都府は、9.7%ですが、京都市立高校では20.0%と大阪府に近い率となっています(京都新聞15.10.15)。都市部では家庭経済状況がかなり悪化している証と思います。

 今回の提言も素案も、審査手続きに公的添付書類で処理するという分かりやすくなっており、評価できる点もあります。しかし、全体の基調が生徒の教育の機会均等を保障しようという観点にたっておらず、「制度としての持続可能性」という美名のもとに、40億円の負担をどう減らすのかという財政面からの観点が隠れているように思えてなりません。現行制度でも持続は充分可能です。減免者数が減っても、未納者数が増えるだけで、問題の解消にはなりません。よって、提言・素案による改変には反対です。

さて、素案についてですが、()では、前段で「生活保護を受けている」「児童扶養手当を全額受給している」「児童養護施設等に入所している」生徒については公的証明書でもって全額免除となること述べた後で、後段「また、これ以外で所得審査を行う必要がある場合 ・・・ 保護者のみの収入により認定を行うこととします」とあるが、「これ以外」とは、()の「生活保護に準じる程度に困窮している」世帯や()の「長期疾病等」「天災その他不慮の災害」世帯や()の「その他」を審査する時に「保護者のみの収入により」行うことを意味するのでしょうか。これは確認です。もし、そうなら、例えば、父親は課税され、母親は非課税で、兄弟に障害者がいたとします。父親の住民税は障害者控除をしても課税されているわけです。このケースでは今回の素案では免除になりませんね。しかし、現行制度では所得税上の障害者控除を受けたうえに、障害者を抱えている点が考慮されています。障害者を家族に抱えているために働きに行けない家庭が多いと思います。つまり、住民税の課税、非課税だけでは、生活の困窮度は計れない場合があるということです。

 2点目は、所得証明書・非課税証明書の発行時期の問題です。前年分の証明書は多くの市町村は6月の初めから発行しています。3月や4月の時点では、前々年分の所得で課税されていた保護者が6月に非課税となった場合、1期分の申請が締め切られており、2期分から免除となるのでしょうか。もし、2期分からの免除であるのならおかしいです。授業料などの使用料は年額制であり、この場合は1期分から当然免除となるべきです。その点は示されていません。

以上ですが、私の思うに、教育は未来の納税者の育成でもあります。大局的な観点に立って、とりあえず授業料の低額化、減免対象者の拡大をすることを教育委員会が率先して行うように望みます。このことが、府財政の確立にもつながると確信しています。

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